ボップイ村調査③
ボップイ村を突き抜ける主要通り
周囲にはのどかな田園風景が広がっています
ときどき牛の大群にも出くわします。田舎ではよくある光景です。
でこぼこ道を上下に揺れながら娯楽施設もないこの村をバイクで走り抜けるたびに,日本の歌手吉幾三のあの名曲を思い出します。「はぁ テレビもねぇ ラジオもねぇ 車もそれほど走ってねぇ!」
前回,前々回とボップイ村の人口構成や村民の生業について見てきましたが,今回は各家庭にある車,テレビ,電話などの所有状況を見てみます。吉幾三が歌うように,各家には本当にテレビもラジオも車もないのか・・・。
カンボジアでみられるごく普通の高床式の家です。
家の脇に水瓶がおいてあります。屋根の雨水が流れ込むようになっています。この水で普段,料理をしたり水浴びをしたりします。水が無くなったら隣町から買ってきます。
ボップイ村でも有数の大きな家です
この家もかなり立派なつくりです
この家は非常に簡素なつくりです
ここはさらに簡素なつくりです
■テレビについて。
ボップイ村の全83世帯中テレビを持っていると回答した世帯は40世帯(48%)でした。どんなテレビを持っているか見せてもらいました。
ある家庭で見せてもらった「テレビ」
厳密にはこれはテレビではなくて,DVDプレイヤーだと思われますが,ボップイ村ではテレビと言えばこれのことだそうです。「数年前は韓国のドラマが流行っていたが,今はタイのドラマが流行ってる」とのこと(いずれもクメール語の吹き替え版)。街中の食堂でもいつも歌謡曲かタイのドラマがテレビで流されていますし,確かにカンボジア全体で流行っているようです。DVDはモーンやコックロローの街で購入してくるようです。
■ラジオについて。
ラジオは30世帯(36%)が所有していました。聞く番組は専ら歌謡曲だそうです。
■電話について。
電話については,固定電話はなく,携帯電話が普及しています。都市部では1人1台所有するのが普通ですが,ボップイ村では(ボップイ村に限らずカンボジア国内の多くの田舎では)一家に1台というところが多いです。携帯電話を所有している世帯は66世帯(80%)で,1世帯だけ2台の携帯電話を所有していました。携帯電話でもラジオ放送は聞けるので,これでラジオを聴く人もいるようです。
以上が主な電化製品(電球は除く)ですが,まだ電気が送電されていないボップイ村では,電源には乗用車などに見られるバッテリ―が使用されています。
画面左下に見えるバッテリーがこの家の電源になります
バッテリーの充電を請け負っている家があり,村民はここにバッテリーをもってきて充電します。家庭の電気使用量によって幅はありますが,だいたい3日~1週間に1度のペースで充電するようです。
バッテリー充電を請け負っている家
「テレビもねぇ ラジオもねぇ」というわけでもなさそうですが,全家庭に普及しているわけでもなく,家によっては「テレビもねぇ ラジオもねぇ」とぼやいているかもしれません。そもそも村民のいうテレビも厳密に言えばテレビとは言えませんし,そういう意味では本当に「テレビもねぇ ラジオもねぇ」なのかもしれません。ついでに言うと,ここには新聞も来ません。ラジオでもニュースを聞くことはそんなに無いようで,ずっとボップイ村で過ごしていたら,世の中の動きに本当に疎くなってしまいそうです。
■車について。
いわゆる4輪の乗用車を所有している世帯は0でしたが,バイクやエンジン付荷車は一応走っています(ただし多くはないです)。バイクを所有している世帯は27世帯(33%),エンジン付荷車を所有している世帯は23世帯(28%)です。このうち,この両方を所有している世帯が9世帯(11%)でした。さらにトラクターを持っている世帯及び脱穀機を持っている世帯がそれぞれ1世帯ずつありました。トラクターや脱穀機は所有者が他の村民に(有料で)貸し出す形で皆で共用しているようです。
エンジン付荷車。スイカを積んで運んでいます。その他,人も含め乗せられるものは何でも乗せて運びます。
トラクター。右奥の倉庫にしまわれています。
脱穀機。収穫期には引っ張りだこです。
調査項目には入れていないので数は分かりませんが,いわゆる「便所」のない家もけっこうあります。以前村長宅にお邪魔した際,「便所はどこ?」と聞くと,外の畑の方を指さされました。特にどこと決まっているわけではないようです。また,ボップイ村は慢性的に水の不足している地域で,ため池は一応ありますが衛生的ではなく,飲み水はもちろん普段の水浴びのための水の確保も大変です。水はコックロローやモーンなどの街まで行って買うようです。きれいな水が安定して得られないというのが生活するうえで本当に大変だろうと感じます。
産業(仕事)もあまりない上に,生活も不便だとしたら,「オラこんな村嫌だ」と言って若者が出ていったとしても不思議ではありません。出ていく人たちが「こんな村嫌だ」と言って出ていくかどうかは分かりませんが(本当は出ていきたくないけど,お金を稼ぐために出ていかざるを得ないかもしれない),少なくとも現状では,村を出ていく人はいても,よそから村に来て定住する人はいません。カンボジア全体では道路や電気などのインフラの整備が着々と進んできていますが,ボップイ村にもインフラ整備の手が伸びてくれば,また状況は変わってくるかもしれません。村民もできるだけこの状況が改善されることを願っていますが,まだまだしばらくはこの状況は変わらないまま続くことでしょう。とりあえずは,毎年雨季にしっかりと雨が降り,大地も村民の生活も潤うことを心よりお祈り申し上げます。
― 終わり ー
文責:曽田
過去の記事
ボップイ村調査①
ボップイ村調査②
2015年3月31日更新