ボップイ村調査②
前回,ボップイ村の人口について見ましたが,今回はボップイ村各世帯の生業について見てみます。
まずは各世帯の構成人数を見てみます。
1世帯当たりの構成人数
4人世帯が21世帯と最も多く,ついで6人世帯が14世帯,3人世帯・5人世帯がともに13世帯と続いています。生業(職業)としては,ほとんどの世帯が農業を営んでいます。ボップイ村全83世帯中,耕作地(借地を含む)を持っている世帯は76世帯あり,平均して2.5haの土地で農業を営んでいるようです。
各世帯の所有耕作地の面積
米の年間収量(t)
また米作を行っている農家において,1haあたりの米の年間収量を以下に示します。
1haあたりの米の年間収量
日本の農家の収量と比較すると,日本の農家では1haあたり6t程度の収量はあるようで,これと比べたらかなり少ないことは分かります。一方で,田中甲斐氏(2010年3月から2011年3月までCMCバッタンバン駐在員)がボップイ村の農業についての報告の中で,『政府(カンボジア政府)の発表する平均の稲収量は2.5t/haとされているが、CMCがサポートするボップイ村では1t/ha前後と少ない。』と述べていますが,このことから以前に比べたら農業技術が大きく進歩・改善していることはうかがえます。
さてここからは,村民の農業以外の職業(学生,無職を含む)について見ていきます。調査では,ボップイ村の人口380人中140人が農業に従事しているとの回答が得られましたが,農業以外の職業(学生,無職を含む)を回答した240人について以下に示します。
農業以外の職業(数字は人数)
「日雇い労働」が14人いますが,彼らは家を建てたり,森で木を切ったりと人手のいる作業が行われる際に不定期に召集されるようです。その他商店での小売り,バイク修理などがあります。また,彼らの多くは農業との兼業で行っているようです。
バイク修理
商店。ボップイ村に2つある商店のうちの一つ。お菓子やたばこなどのちょっとした日用品が売られています
木に住んでいるという食用の虫(アリに似ている)を捕まえて洗っています
町にもっていって売ります
調理等で使う炭を作って売ります
子どもの層に目を向けてみると,幼児が49人,小学生が90人と全体の中でも突出しています。ボップイ村の人口の大部分が15歳未満の子どもで占められていることからもこの数はうなずけます。また,中学生・高校生の数が少ないのも特徴と言えるでしょう。これは,「小学校の就学率は高いが,中学校の就学率は低い」というカンボジア全体の特徴ともよく合致します。
一方で無職も目立ちます。6歳以上18歳未満の無職(本来は学校に通っているべき層)が36人とかなりの数に上ります。また,18歳以上60歳未満の無職も12人に上りますが,多くは20歳前後の若者です。聞くところによると,彼らは学校にも行かず家の仕事も手伝わず,ただぶらぶらと遊んでいるとのこと。仕事がないのか,単に働かないのかは定かではないですが,時間とエネルギーを持て余している者もかなりいるようです。
全体的に農業以外の産業は乏しく,職業の選択は限られてしまいますが,米は家族が食べるのに困らない程度にはとれているようですし,農産物を売ったり,タイなどで出稼ぎをしている家族から仕送りしてもらったりと,ある程度の現金収入もあって生活は何とかできているようです。
職業というほどのものではありませんが,牛を連れて歩くというのは村民の日課(日常業務)となっています
サトウキビ畑。いくつかの農家ではサトウキビも作っているようです
コントゥオットというくだものをとっています。子どもたちにとっては仕事というよりは遊びですが,こうやって日々身の回りのことを学んでいます
文責:曽田実
過去の記事
ボップイ村調査①
2015年3月26日更新