パソコン技術訓練による地雷被害者・地雷原生活者収入向上プロジェクト②~プノンペンでのパソコン訓練途中経過~
11月27日(水)
ロン・チャンティとスレーン・ハイの両名がプノンペンのダイロクにてパソコン訓練を受け始めてから約1カ月がたちました。2か月間の訓練のうちの半分が経過したことになります。そこで今回プノンペンのダイロクを訪問し,彼らの様子を見てきました。
ダイロクオフィスにて画像切り取りの練習をしています。手前からハイとチャンティ。そのほかはダイロクの社員さんたちで,まさに仕事の真っ最中です。
チャンティとハイは,ダイロクの社員さんたちの仕事の様子を見ながら,黙々と自分の課題に取り組んでいました。本人たちの表情や言葉からも充実した様子がうかがえます。また,ダイロクの廣田社長からも「2人とも,1カ月やったなりのうまさになっている」との評価もいただいており,ここまではまずまず順調にきているようです。
今後について廣田社長から「スピードはこれからです」と言われた通り,残りの1カ月でさらにレベルアップし,丁寧になおかつ速く仕事をこなせるようにならなければなりません。2人にはより一層精進していってもらいたいです。
休日,下宿先での様子ものぞいてみました。2人とも問題なくプノンペン生活を送っているようでした。
部屋でくつろいでいるところ,ちょっとお邪魔しました。
炊飯器。5$で買ったそうです。
どうやらきちんと自炊生活をしているようです。外食だと高くつきますから,当然と言えば当然でしょうけど。
食事はどうしてるか気にはなっていましたが何の問題もないようで,堅実にプノンペン生活を送っている様子がうかがえて,そちらの方も安心しました。特にハイは親類や友達がプノンペンにいて連絡も取りあっているようで,すんなりとプノンペン生活に馴染んだようでした。
私が帰る際,下宿先の玄関前まで出て見送ってくれました。チャンティのいる場所は大家さんの部屋。彼らの部屋は右側通路の奥の一角。
プノンペンにやってきて1カ月がたち,来た当初よりも表情にゆとりが出て,充実感も漂っています。あと1か月,気を抜かず,この調子でしっかりとがんばっていってもらいたいです。
文責:曽田実
2013年11月27日更新
カンボジアの教育問題
11月21日(木)
只今,各地の小中学校を訪問し,MRE活動を展開しておりますが,教室の中に入るとポスターや学習内容が書かれた模造紙などが壁に所せましと張られていて,普段の子どもたちの学習の様子がうかがえます。
黒板の左側にはカンボジア語の文字を学習するポスターが,黒板の下には掛け算の九九(9×10まである)が書かれた紙が貼られています。
名簿等も教室に掲示されています。
ある学校では,道路標識のポスターが貼られていました。村に住んでいる限り,絶対に目にすることのないマークがずらっと並んでいます。
中学生にもなると学習内容の質も量も格段にレベルアップします。以下第9学年(中学校第3学年)の教室の掲示物を紹介します。
地学「地球の内部構造」
右側が数学「三角形の合同条件および相似条件」と,ちょっと見にくいですが左側が物理「いろいろな物質の熱量について」
式の展開と因数分解の公式
三角比sin・cos・tan
カンボジアの教育問題については,学校の数や教員の数・質,子どもの就学率などがよく議論されますが,学習内容,特に教科学習の内容についての具体的な議論はあまり多くはありません。そこで今回は,カンボジアの義務教育における学習内容,とりわけ数学及び理科について少し考えてみようと思います。
写真にもあるように,中学校の数学・理科は日本の同学年と比べ,かなり高度な内容となっています。実際,カンボジアの小・中学校の数学の教科書を見てみると,小学5年生で文字式が,小学6年生で方程式が導入されています。日本の教育課程でも小学6年で「文字を用いた式」が導入されていますが,本格的には「文字を用いた式」や「方程式」は中学校で学習します。そして,学年が進みカンボジアの第9学年(中学3年)にもなると,日本の高校数学で登場する三角比(sin・cos・tan)や2元連立1次方程式を解くための行列式が導入されるわけです。
一方理科に目を向けてみると,小学校の方は比較的易しい内容になっていますが,中学校の理科の教科書をひとたびめくれば,初っ端から高校物理の教科書か!?と思わせるような難解な内容がぎっしり詰め込まれています。
算数・数学に関しては,進度がはや過ぎる側面はあるにせよ,学習内容はある程度体系的に進められていますが,理科に関しては,子どもの概念形成の過程をまるっきり無視した(ような印象を受ける)学習内容になっています。教師がそこをしっかりと補足し,生徒が理解できるよう説明してあげられればいいのですが,教師自身も内容をきちんと理解していないのが実情であり(教科書を何度も読み込んで丸暗記はしています),結局授業は教科書の読み合わせであり,生徒は教科書の記述内容をひたすら丸暗記するしかありません。
数学にせよ理科にせよ,カンボジアの教科書の内容は子どもたちにとって(教師にとっても)難解すぎる内容であり,そのうえ,論理的思考力,科学的思考力を育成するという視点を欠いているように思えます。そしてその結果,教科書の内容をなぞるだけの丸暗記授業がカンボジアの,特に田舎の教育の現状となってしまっています。
田舎でも頭のいい子はたくさんいますし,どの子も自然科学に興味を持ち得ます。子どもの興味を引き出し,科学的・論理的思考力を育み,可能性を伸ばしてあげられるような学校教育を期待したいです。そのためにも,カンボジアの実情に合わせ,内容を厳選し,子どもの興味,関心,理解度等を考慮したカリキュラムの作成をカンボジア教育省には是非とも期待したいところです。
文責;曽田実
2013年11月22日更新
地雷危険回避教育プロジェクト⑫~各小中学校にてMRE開始~
11月14日(木)
11月4日(月)より,ラタナックモンドル郡オンダウクハエプ町を皮切りに,各地の小中学校にてMRE(地雷危険回避教育)を開始いたしました。
ラタナックモンドル郡オンダウクハエプ町プームカンダール小学校
1,2年生合同クラス。このクラスの先生も生徒と一緒に参加しています。
ところ変わってコックロロー郡ハップ町スラエンチュオ小学校の4,5,6年生合同クラス。
先生もMREスタッフと一緒に適宜児童をサポートしてくれます。
先生が前に立って生徒に説明する一幕も。
8~9月に実施した学校に通っていない学齢児童を対象としたMRE活動のときとは異なり,同程度の年齢,学力レベルの子が適度な人数(多すぎない人数)で参加してくれているので,子どもの発達段階に応じた指導ができ,なおかつ気心が知れた仲間同士ということもあってか自分の体験などを子どもたちが活発に発言できていて,とてもいい雰囲気の中MRE活動が行えています。
さらに,児童と一緒に参加し,児童に声をかけたり,時には教壇に立って説明をしてくれたりしてMRE活動を後押しくれる先生もいます。実は小学校3年生と5年生の社会の教科書の中に「地雷」について触れてある単元があります。そのこともあってか,子どもたちも学年が上がるにつれて,地雷についての知識やその危険性に対する意識が高くなっている気がしました(そんな気がした程度ですが・・・)。少なくとも教科書の内容は教えているでしょうが,学校教育の中で教師が児童に対してどの程度地雷問題の話をしているのか,ちょっと興味あるところです。
また,小学校だけではなく,中学校でもMREを実施しています。
ラタナックモンドル郡オンダウクハエプ町プレイオムポー中学校第9学年(日本でいうと中学3年)。一クラスの人数は小学校に比べかなり増えますが,さすがは中学生。非常に落ち着いた雰囲気で話を聞いてくれています。MREスタッフもとてもやりやすいと言っていました。
カンボジアでは(カンボジアに限ったことではないかもしれませんが),お兄さんお姉さんが小さい子の面倒を見るというのが慣習としてあります。自分自身の身を守るだけでなく,身近にいる幼い弟や妹たち,将来的には自身の子どもたちの身を守るという意味においても彼らにはきちんと学んでもらいたいものです。
11月も中旬,連日晴天が続いており,本格的に乾季に入ったか!と思いきや雨がぱらぱら降る日も時々あり,未だ雨期明け宣言できない状況ですが,8月9月のように雨の心配をする必要もほぼなくなりました。子どもたちを指導していく中で,いろいろなことを試し,各地でいろいろな発見を期待しつつ,MRE活動を充実させていければと思います。
文責:曽田実
2013年11月18日更新
地雷危険回避教育プロジェクト⑪~実践演習~
11月1日(金)
11月に入り,カンボジアではからっとした晴天が続いています。ときどき雨がぱらつくことがありますが,ほぼ雨期も終わり乾季に移り変わりつつあるようです。10月は近年稀にみる洪水被害に見舞われました。雨期の洪水がカンボジアの大地に恵みをもたらすと言いますが,この洪水により農作物にも少なからぬ被害が出ているとのニュースも目にします。聞くところによると,地雷原にも影響があるとのこと。それは,洪水で地雷が掘り起こされ,流されてしまうというもの。つまり,すでに撤去済みの場所にも地雷が流れ着いてしまっている可能性があるということのようです。
まあ,どこであっても気をつけなさいということでしょう。
ボップイ小学校へ行く途中の道路。洪水の影響で道がえぐれています。ただ,これは洪水が直接的な原因ではありますが,道路の品質にも問題があるような気もします。カンボジアの道路はとにかくもろい。ここに限らず,ちょっとしたことですぐ道路に穴があきます。
さて,MRE活動ですが,プチュンバン明けから10月いっぱいまで,対象地区の全小学校に電話で児童数等を問い合わせ,それをもとに11月からの就学児童を対象としたMRE活動の計画を立てました。そして,11月4日(月)から,MREスタッフは,ラタナックモンドル郡を皮切りに各地区の小学校をまわってMRE活動を展開していきます。学校の児童数によっては複数の学年合同で指導することもありますが,基本的には各学年ごとに区切って子どもたちに指導していきます。9月までの学校に行っていない子どもたちを対象としたMREでは,子どもたちの年齢にかなりの幅がありましたが,今回はある程度子どもの年齢(発達段階)に合わせた指導を行えそうです。
それに先立ち,11月1日(金)にボップイ小学校でMRE活動の実践演習を行いました。クラスごとに指導できたことにより,適度な人数で,なおかつ年齢に合わせた授業ができました。授業後,スタッフと授業についての細かい修正点を確認し,ボップイ小を後にしました。
帰り道,不発弾を見たという児童の証言をもとに,スタッフと一緒にその現場(草むら)に立ち寄ってみました。
児童の証言によるとこの道路脇にあるとのこと
どうやら奥の方に見つけたようです。
ちょっと埋もれた状態で不発弾が眠っていました。
「ここに地雷もしくは不発弾があるよ」という目印として束にまとめた草を結んでいます。その上にはナイロン袋が引っ掛けてありますが,これも目印です。
この草を結んで目印にするというのは,看板や貼り紙など何もない場所で地雷・不発弾を発見した際の目印としてとても重要です。もちろんMRE活動の中でも子どもたちに教えています。いつどこで出くわすかわからないので,常に心構えは持っておきたいところです。
文責:曽田実
2013年11月8日更新
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