地雷危険回避教育プロジェクト⑬~田舎の情景~
12月6日(金)
11月27日(水),バッタンバン州ソムロート群に行ってきました。ソムロート群はバッタンバン州の南西部,タイ国境沿いに位置する辺境の地です。スタッフからは常々「ソムロートはものすごいど田舎だ」「道が悪くて大変だ」と聞いており,どんなところか一度行ってみたいと思っておりました。
今回,MRE視察という大義名分のもと,その辺境の地へ赴き,MREスタッフとともに民家に泊めてもらい,カンボジアの超ど田舎の暮らしをほんの一部ですが味わってきました。
事務所のあるバッタンバン市内からラタナックモンドルを通ってパイリンに抜ける道はアスファルトで舗装されていてバイクでも非常に走りやすいですが,ラタナックモンドルから枝分かれしてソムロートに入る地点からは延々ンと埃の舞うがたがた道がつづきます。
午後1時過ぎに事務所を出発し,バイクで3時間かけて今回のMRE活動地区であるソムロート群西部,タイ国境手前にあるスン村にたどり着きました。泊めていただいたのは大豆とトウモロコシをつくって生計を立てているという農家で,家には収穫されたばかりの大豆の袋が積んでありました。農家の方は,「うちのような田舎の農家はとっても貧しいんだよ」などと言っておられましたが,大豆やトウモロコシを売って得たお金を貯めて農業機械を購入するなど,家の様子を見る限りでは安定したそこそこの暮らしをしている印象を持ちました。確かにこの地域は電気や水道等のインフラ整備はされておらず,都市部に比べると開発の遅れたまさにど田舎ですが,耕地としての土地は豊かで,人々の暮らしもそんなに悪いものではなさそうでした。
泊めていただいたお家。典型的な高床式の家屋です。
収穫された大豆が袋詰めされ,積んであります。袋にはタイ語で何やら書かれています。袋は業者が55~60ドルで買い取り,タイへ持って行って売るとのことです。
3000ドルで購入した農耕機械(日本製)。大豆やトウモロコシが毎年順調に収穫できれば,4年で購入できるとのことです。
夕方5時ごろ,暗くなる前に夕食の準備が始まりました。
ご飯を炊いているのはスタッフのダラです。
ソカーは家の脇にある畑で,野菜を摘んでいます。産地直送のとれたて野菜です。
ご飯を食べる前に(日が暮れて暗くなる前に)水浴びをして体を洗います。屋外ですが,男性も女性も体にクロマー(カンボジア製の布)を巻いた状態で体を洗います。日本でいう「お風呂に入る」ということとは全く様相が異なります。バイクで家の近くの川へ行き,そこで水浴びをする人もいました。日本でいうと銭湯へ行く感覚でしょうか。もちろん料金はかかりません。ただ,この時期は朝夕はめっきり冷え込んで,水浴びがものすごく億劫になります。
水瓶に溜めてある水を杓子ですくって体にかけます。脇にあるポリタンクは近くの川から水を汲んでくるためのもの。
夜,バッテリーにつないだ電灯の明かりのもと,晩御飯をいただきました。
電気の通っていない地域の家ではこのようにバッテリーの電気で明かりを灯します。
家族で輪になって夕食をとります。
食事が終わった後は,みんなで雑談をしながらゆったりとくつろぎます。都市部は当然ですが,田舎の方でもテレビはだいぶ普及してきており,テレビのある家庭ではたいていテレビを見て過ごすのですが,ここは未だないようです。その代り,携帯電話はどんな僻地でもほとんどの人が持っており,この家でも男の子が家族だんらんの脇で携帯電話のゲームで遊んでいたのは印象的でした(都市部ではもはや当たり前の光景ですが)。
夜10過ぎ,「そろそろ寝るか」と皆おもむろに寝る準備(床に布団を敷いたり,ハンモックをつるしたり)を始めました。私はこの日持参したハンモックで寝ました。
蚊帳付きのハンモック。田舎で寝泊まりするようなとき,持っているととても便利です。
翌朝,お世話になった家の人たちに別れを告げ,MREスタッフと一緒にこの日のMRE活動現場である〇〇中学校へ行きました(私は1晩だけでしたが,MREスタッフはもう1晩お世話になっています)。中学校でのMRE活動の様子を見た後,私は一足先に事務所に戻りました。
金曜日,ソムロート地区でのMRE活動を終えて,スタッフが事務所に戻ってきました。今回泊めていただいた家で「遊びに来ていたあの日本人(私)にあげてくれ」とバナナを手渡されたようです。ありがたくいただきました。
カンボジアの多くの地方では未だに電気,水道等のインフラが整っていませんが,それ故に,電気,水道が当たり前にある環境で生まれ育った私にとっては,逆に「もともとはこういう生活だったんだよな」と新鮮な発見や刺激があり,とても面白いです。とは言っても,現地の人はインフラが整備され便利な生活になることを願っておられますし,いずれはこの地方にも開発の手が伸びてくることでしょう。
お土産にもらったバナナ
文責:曽田実
2013年12月9日更新