地雷危険回避教育プロジェクト⑩******
10月3日(木)
8月12日より,6週間にわたって6つの地区でMRE(Mine Risk Education,地雷危険回避教育)を実施してきました。今回の報告ではこれまでのMREを総括したいと思いますが,その前に,まずは簡単にカンボジアの行政区画についてご説明いたします。
カンボジアは大きく州(province)と特別市(municipality)に分かれます。
そして州はいくつかの郡(district)に,郡はいくつかの町(commune)に,さらに町はいくつかの村(village)に分かれます。同様に,特別市は区(district/section),区は地区(commune/quater)に分かれます。
今回のプロジェクトにおいて,これまで以下の地区で学校に行っていない子どもを対象としてMREを実施してきました。
① 8月12日~8月16日 バッタンバン州ラタナックモンドル郡
② 8月19日~8月23日 バッタンバン州コックロロー郡
③ 8月26日~8月30日 バッタンバン州ソムロート郡
④ 9月02日~9月06日 パイリン州サラークラウ郡
⑤ 9月09日~9月13日 パイリン州パイリン郡
⑥ 9月16日~9月20日 パイリン州パイリン郡
※ただし,参加者の中には学校に行っていない子どもだけでなく,学校に普通に通っている子も多くいました。また,10月以降はこの6地区に加えて,オーチュラウ郡とマライ郡(いずれもバンテアイミエンチェイ州)において,小学校の児童を対象にMREを実施する予定です。
このMRE事業の中核を担うのがMREトレーナーのラブットとソカー。彼らは使命感を持って熱心に子どもたちを指導しており,各地域でとても充実した教育活動を展開しています。
ラブット。子どもたちとともに地雷に遭遇した場合のシュミレーションを行っています。子どもたちにとって退屈な講義にならないよう,子どもたちにも積極的に授業に参加してもらうよう心掛けています。
ソカー。ラブットの補佐役として,子どもたちを見守りつつ,学習の手助けをしています。
また,CMCスタッフのダラは,表に立つことはありませんが,事務所で連絡・調整を行ったり,アンケート調査結果をまとめたりと,このプロジェクトを陰で支えてくれています。
ダラ。普段は事務所でパソコンに向かっていますが,必要があればバイクであちこち走り回り調整をしてくれます。
このMRE活動では,子どもたちに地雷や不発弾の危険性を認識してもらい,適切な行動をとれるように指導することが主目的ですが,それと同時に地域の実態,特に子どもたちの地雷に対する認識や体験なども調査しています。調査は,アンケート用紙に記入してもらう形で行っていますが,普段学校に通っていないこともあってか,文字の読み書きができない子がたくさんいたことや,アンケート調査そのものがよくわからず(慣れておらず),アンケートの意図を理解しないまま隣の子の解答を丸写しする子もいるなど,得られた調査結果はやや信憑性の乏しいものとなってしまいました。それでも,アンケートを通して,子どもたちの実態及び認識を探るうえで重要な情報も多く得られました。
アンケート調査の中で,「地雷または不発弾を見たことがあるか?」という質問に対して各地域で5~30%の子どもが「見たことがある」と答えていました。子どもたちが見たと言っているものが,本当に地雷もしくは不発弾かどうかは定かではありませんが,やはり現地の人にとって地雷・不発弾は身近に存在する脅威であることは確かなようです。
バッタンバン州コックロロー郡にて。地雷を見たことがあるという男児に,どの種類の地雷を見たのか聞いてみました。男児はポスターの写真の中から,自分が見たことがあるという地雷を指さしました。彼が指さしたのは対戦車地雷の一種。
また,バッタンバン州コックロロー郡でMRE授業を行った後,「学校の近くに不発弾が落ちてるよ」という児童に連れられて,不発弾を見に行きました。
行ってみると確かに,通学路脇の木の陰に不発弾が埋もれていました。
写真中央,木の葉の間から不発弾(瓶のような形)が見えます。この不発弾を横目に,子どもたちは学校に通っています。
さて,10月からカンボジアは新年度となります。そして,今度は学校に通っている子どもたちを対象として,新たにこのMRE活動を再開します。これまでの反省を生かし,学校の協力も得ながら,さらに充実した活動を展開できればと思います。
文責:曽田実
2013年10月4日更新