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CMC Report |18 Apr, 2012
Manual Demining
人による地雷除去
地雷除去は危険が伴う作業だ。地雷除去を行なうディマイナーの安全を確保することが必要である。 そして地雷除去後に人々が安全に土地を利用できるように地雷は完全に取り除かれなければならな い。そのために人道的な地雷除去の作業には国際基準があり、それぞれの国、それぞれの地雷除去団 体が除去方法、手段により状況に合わせて作業手順を定めており厳密に遵守しなければならない。最も広く多く行なわれている人の手による地雷除去の作業手順の一例を紹介する。
1. 地雷原のマーキング
2. 灌木、雑草の処理
3. 金属探知機による探査
4. 地中探査
5. 爆破処理
どこが地雷原でどこが安全な場所なのか、どこまで地雷除去が終わったのかなど明確にするために標 識を立てるなどマーキングを行なう。下記はMAGのマーキング規則。写真左から、
1 白(長) 安全区域
2 白(短) 管理区域
3 地雷標識地雷原
4 赤−白地雷原境界
5 青地雷除去開始地点
6 白−青スーパーバイザーによって除去完了確認済
7 青−白−青シニアディマイナーによって除去完了確認済
8 黄−青地雷対策オフィサーによって除去完了確認済
9 赤−青第3者機関によって除去完了確認済
10 黄地雷・不発弾の爆破処理が行なわれた地点を示す
11 赤−黄不発弾の発見箇所
12 赤灌木除去機作業の境界
13 青(ロープ) 下記赤ロープに並行して60cm前方に張る境界線
14 赤(ロープ) 地雷除去作業レーンの境界線
1人1レーン方式 約1メートル幅でレーンを区切り除去を奥へと進めていく。かつては1レーンを 2人のディマイナーが分担していたが現在は1人で行なうのが主流である。
側面アプローチ方式 幅25メートル(現場の状況による)、奥行60cmのレーンを作り側面からアプ ローチしてディマイナーが平行移動して除去していく方法。
カンボジアの地雷原は木や草が密生している場所であることが多い。地雷除去を安全に確実に行なう ためにまず低木の伐採、枝払い、草刈りをして地面が見える状態にしなければならない。地雷は地中 に埋められているだけではなく地上に設置されていることもある。安全な場所から地上に地雷がない かどうかを見極めつ慎重に作業が行なわれる。地雷除去作業の実に7割から8割が灌木、雑草の処理 に費やされる。
地上に設置される破片式対人地雷
– POMZ-2M ソ連製(左の2つ)
– POMZ-2 ソ連製(右から2番目)
– MBV-78A1 ベトナム製(右端)
はさみ、斧、スコップなど地雷除去作業中にディ マイナーが使用する道具類
灌木除去の機械化
山梨日立建機製のスイングアーム型ブラッシュカッター(灌木除去機)、BM307-SG16。対人地雷 を処理できるので地雷除去機と呼ばれることもあるが灌木の伐採、除去をメインに運用される。日本 の無償資金協力によりCMACにこれまで30台あまりの灌木除去機が贈与され地雷除去の効率化、ス ピードアップ化、安全化に寄与している。
小型の灌木除去機、Tempest Mk 5。リモート コントロールで操作する。
ストリマー(草刈り機)による草刈り作業。
金属探知機を用いて土の中の金属反応を調べる。地雷だけではなく銃弾や破片、鉄くずにも金属探知 機は反応する。土の中で金属反応がある場合、見えないのでこの段階では地雷かただの金属片なのか はわからない。すべてを地雷とみなして慎重に作業を行わなければならない。
探知作業に入る前に金属探知機が正常に作動するかどうか金属が入っているテストピースを用いてア ラーム音が鳴るかどうかチェックする。
(写真左)金属探知機のサーチヘッドを地面にできるだけ近づけ水平に保ちながらゆっくり左右に往復させて手前から奥へと移動させながら金属反応の有無をアラーム音にて確認する。
(写真右)カンボジアで最も多く使用されている地雷探知機、Minelab F3。
カンボジアで多く使用された対人地雷のひとつ、Type72。外装ケースはプラスチックで撃針(写真 右の中央部)や雷管など金属部品は最小限かつ小さいため金属探知機を用いての探知は容易ではな い。非常に小さなアラーム音の変化に集中しなければならない。この地雷を探知できる性能が金属探知機に求められる。
HSTAMIDS(Handheld Standoff Mine Detection System)
金属探知機に地中レーダーを組み合わせ、地中の埋設物が金属片なのか地雷なのか識別できる。 HSTAMIDSはアメリカ陸軍により研究開発、実用化されてカンボジアでの地雷除去にも運用されてい る。従来の金属探知機に比べ除去作業の効率化に役立っているが導入コストがネックとなっている。
ディープサーチ
対戦車地雷は金属製の大型地雷で容易に探知されることを避けるため地中深く(1~1.5メートル)に 埋められていることが多い。地中深くの探知に特化した金属探知機によるディープサーチを行なう。
Ebinger UPEX 740M 地中深くに埋められている対戦車地雷や不発弾を 探知する。
対戦車地雷 TM-46
直径305mm、高さ108mm、重さ8.6kg。TNT 火薬5.7kg。金属ケース。中国製。
金属探知機で反応があったところをマーキングする。地中の金属反応が地雷なのかただの金属片なの か探査する。
(左)金属反応があった場所(白三角の先)の手前(少 なくとも20cm以上)からスコップで穴を掘る。
(右)プロッダーと呼ばれる金属の棒を側面から少しず つ地中に差し入れる。プロッダーの先に障害物が あればその感触から大きさと形を判断し地雷の有 無を確かめる。
地雷が発見されれば地雷を示すマーキング(上の写真では赤の三角)を行なう。状況に応じてその場 で爆破処理か、他の場所へ移してまとめて爆破処理をする。
(左)発見された対人地雷、Type 69。
(右)発見された対人地雷、PMN-2。
発見された地雷を爆破処理する。地雷を誘爆させるために火薬と雷管をセットして導線を引き、安全 のために離れた距離から起爆装置で爆破する。
http://youtu.be/L8NkUNh2Aqw
爆破処理した跡に黄色の標識を立てる。地雷が高密度に埋められていたことがわかる。
2012年4月18日更新