スタディーツアー感想
百瀬 雄一郎(第9次スタディーツアー 参加)

今回のスタディーツアーを通じて、観光では決して見ることのできないカンボジアの「今」を見ることができた。戦争が残した後遺症、それに今なお苦しむ罪もない人々。そして、将来それを担う子供たち。

カンボジアの過去に起こったことの衝撃は到着したプノンペンからすでに始まっていた。トゥールスレーン収容所、Killing Fieldと過去とは言ってもほんの30年ほど前に起こった現実を見て愕然となった。見たり聞いたりした事はある種他人事、遠い過去の出来事と思い込んでしまうが、ここには殺されると分かって写真に収まる人々、そしてそのなかの誰かかもしれない遺骨の数々。彼ら、彼女たちの無念を思うと言葉にならない怒りと悲しみがこみ上げてくるのを感じた。

しかし、その後もカンボジアの人々は苦しみ続けている。次に訪れたごみの山。その日は風があったためか、いつもよりはまだまし。と、大谷代表はおっしゃるが、とても言葉に表すことのできない臭いが充満していた。なにしろ足元はそれが元々、なんであったのか想像もできない物体で埋め尽くされており、ぐにゃぐにゃしていた。そんな中で一生懸命再生可能な金属(主に空き缶)やビニール袋を分別している人々がいた。なかには78歳くらいの子供たち(実は栄養不足のために小さく見えただけで実際には1213歳らしい)も大勢働いている。本来なら就学してるはずの子供たちが、首都プノンペンで、しかもこのような環境のなかで働かなければ食べていけないのがカンボジアの「今」であった。

そして、このカンボジアの「今」を作り出している元凶ともいえる地雷の存在。さまざまなところで「地雷除去のための機械」を研究開発しているというニュースは耳にするが、今回見ることができたカンボジアの「今」は、地形と気候を考えると人海戦術しか通用しそうにない場所であった。また、100%の除去率を求められる人道的地雷除去には、この人海戦術がもっとも有効であろうということが実感できた。

もう一つ、カンボジアの「今」にはAIDS患者の増加がある。第5軍病院というところで、AIDS患者の皆さんとお会いすることができた。彼ら、彼女たちはすでに発症しており、病状は進行するのみである。つまりもう何年も生きていくことはできない人ばかりであった。なにもないところにいきなりAIDS患者は現れない。今から10数年前にカンボジアの政治を良くしようと入ってきた人々の中にその人はいたはずである。

カンボジアの過去と現在を見て、戦争、政治、国際貢献というものを考えさせられる。なぜなら今も世界から戦争はなくなっておらず、支援という名目で武器を手渡している人々がいる。そして行われた戦争に対して国際貢献の名の下にまた多くの人々が苦しめられることになる。

一週間ほどの日程で足早に巡ってきたカンボジアではあるが、自分の目で見、自分の耳で聞いてきた現実は一生忘れることのできない体験となることは間違いない。と同時に、これから自分に何ができるかを真剣に考えいきたい。


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