スタディーツアー感想
西森 志保 (第9次スタディーツアー 参加)

 初めて会う人と初めて行く国に10日間滞在、カンボジアに行くことは即決だったのに、出発するその日まで、どんな旅になるのか不安でいっぱいでした。おなかは壊さないか、食べ物は口に合うのか、過酷な気温に耐えられるのか、現地の子供たちと交流できるのか、危険はないのか、一緒に行く人たちと仲良くできるのか…、その内容は様々です。初日から飛行機の発着が遅れたことも、一層不安を煽りました。しかし、カンボジアの人や文化に触れたとき、くだらない不安や悩みなどは、全て一気に吹き飛んでいたような気がします。自分の心配をする余裕なんてないくらい、カンボジアの現状が訴えかけてくるのです。理不尽に迫害され虐殺された人々のしゃれこうべ、鼻がおかしくなるような悪臭漂うゴミの山で働く人々、栄養失調で成長の止まった子供たち、心臓をえぐる地雷処理の爆発音、埃にまみれ舗装すらされていない道、未だに地雷被害に遭い苦しんでいる人々、ガーゼやタオルすらない病院で死を待つ人々、辛い現状を挙げたらキリがありません。どこから助けていけばいいのかわからなくなるくらい、多くの部分で“国”が機能しておらず、苦しんでいる人々がたくさんいるのです。現状を見ることだけでも十分勉強だといわれても、それでも見ることしかできない自分の無力さをただ痛感するばかりで、部屋に戻ってはメソメソしてしまう日々でした。

しかし、考えさせられることばかりではありませんでした。心が洗われる体験もたくさんできた気がします。どんなに苦しい貧困の中でも、子供たちは笑っていました。地雷被害者達は、職業訓練を通して、自立への道を目指し歩んでいました。カンボジアを助けようと手を差しのべる、様々なNGO団体の絶え間ない努力がありました。経ったばかりの学校で、がんばって勉強をする子供たち、街中の人々も暖かかったです。精神的に、とてもゆっくりとした時間を過ごすことができました。

 想像を超える現状を見ては、とても考えさせられ、逃げ出したくなりました。先の見えない復興に向けて何かし続ける事ができるのか、不安になりました。しかし、カンボジアの人々が味わった辛い過去と、それを忘れさせてくれる現地の人々のやさしさや多くの人の努力を目の前にしたとき、何もしないことだけはいけない、と思うようになりました。

 私には、日本での生活があります。どんなにカンボジアの現状に影響を受け、自分の生活を改めようとしても、日本に帰ってきたら、そこには貧困とは違う、別の厳しさや、物理的な豊かさが待っており、それを拒否することも、自粛することもとても難しく、何もかも元の生活に戻っていってしまうでしょう。しかし、実際に行かなければ伝わらない感情や、見なければ分からない現状があるというのは確かです。

 出発前に行なった募金活動では、正直何に対して自分は訴えているのかわかりませんでした。地雷を撤去するという大義名分はわかっていても、実際に見たことも触れた事も無い実情を第三者に訴えるということは苦痛でもありました。しかし、今回のスタディツアーに参加させていただいた事により、理解を深めることができ、明確な目標のために間接的ではなく、直接的に訴えることができそうな気がします。とても充実した10日間を送ることができました。たった10日間なのに、カンボジアという国がとても好きになりました。今後も、機会があれば、直に触れて刺激をもらいたいと思うくらいです。本当に貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。


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